CD-ROM版

アダルトゲーム・・・ またはエロゲは、ハードコアな性的表現を好まない者や判断能力に劣る子供がプレーするには適さない『性的な表現』が含まれるコンピューターゲームのことです。

東京都青少年の健全な育成に関する条例においては、「電磁的記録媒体に記録されたプログラムを電子計算機等を用いて実行することにより、人に卑わいな行為を擬似的に体験させるもの」

コンピュータソフトウェア倫理機構による公式名称は「R18ゲーム」ですが、俗に「エロゲー」「18禁ゲーム」と呼ばれます。
1980年代の業界黎明期から「美少女ゲーム」という呼び方も。
コンシューマゲーム機と比較した場合には、ハードウェアメーカーによる作品内容・シナリオや販売計画への企画・開発段階でのチェックや干渉がなく、販売対象を18歳以上に限定していることから、性的描写以外の部分においても表現の自由度が大きいこともアダルトゲームを特徴付けている重要な要素となっています。

 

 

1990年代中頃

この時期は、ハードウェア的にはPC-9800シリーズからPC/AT互換機へ、ソフトウェア的にもCUIのDOS系OSからGUIのWindowsへの移行期でした。
この頃のアダルトゲームはエロシーンだけでなく、「どうゲームとして面白くするか」が試行錯誤された時期でもあったのです。
その中で、プレイヤーの選択によって異なる物語と結末が訪れるマルチシナリオ・マルチエンディング形式のゲーム『弟切草』(1992年、チュンソフト)がスーパーファミコンで発売されヒットしました。
この作品のシステムはアダルトゲームにも大きな影響を及ぼし、アダルトゲームでマルチシナリオを確立させたのは『河原崎家の一族』(1993年、シルキーズ)で、その後『DESIRE 〜背徳の螺旋〜』(1994年、シーズウェア)、『EVE burst error』(1995年、シーズウェア)へと発展してゆくのでした。
このPC-98からwindows95への移植における変化は、16色から256色になり音声がついたことにあります。
これだけでも98からの変化としたら大きなものなのですし、『禁断の血族』のWIN版がヒットしたことからも、衝撃を受けた人が多かったのでしょう。

 

1990年代後半

windowsの時代になってゲームもそれまでのフロッピーからCDになり、容量にも余裕が生まれました。
音声や主題歌がつくようになったというのは、windowsによる一番大きな変化とも言えるかもしれません。
技術面では、技術開発や記録媒体の大容量化によってパソコンの画像・音楽表現能力が著しく向上したうえ、1995年のWindows 95シリーズのヒット、パソコンの低価格化によってパソコンユーザーが増加。
一方で1999年に成立した『児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律』によりアダルト・ポルノ業界に対する規制が強化され、対応が迫られるようになります。
アダルトゲームへの音声の本格的な導入は、後述する音楽面と同様にCD-ROM・大容量ハードディスク・PCM・データ圧縮技術などのハードウェア・ソフトウェア両面の技術進歩と普及があって初めて可能になった要素で、時期的にはコンシューマゲーム機における導入とそれほど大差は無く、1990年代前半くらいから徐々に普及し始め、2000年代前半には普遍的なものになっていったのです。

グラフィックが女優による映像ではなく、絵による画像のアダルトゲームにおいては、キャラクターのセリフに合わせた音声データを出力させることがあり、その音声を担当するのはほとんどが声優。

DVD-ROM版

日本のアダルトゲームの最大の特徴を成しているのがグラフィックといえます。
アダルトゲームが出始めた1980年代の8ビットパソコン時代の末期から16ビットパソコン全盛期では、技術上の制約からプログラマー兼デザイナーの描くドット絵に留まっていました。
その流れが大幅に変わったのが、アニメーション制作会社であったガイナックスの参入と『電脳学園』(1989年)『電脳学園2 HIGHWAY BUSTER』(1989年)の登場だったといわれています。
損p後、アニメーターとして名を成した人物がパソゲー業界に参入、これに触発されて、各社成人向け漫画家・アニメーターを起用し始めたのでした。
その中でエルフがアニメーターの竹井正樹氏を起用した『同級生』(1992年)がヒットし、翌年アニメーター横田守氏を起用した『河原崎家の一族』もヒット、漫画・アニメーション業界からの技術流入によってグラフィックデザインの向上が図られることに。
1995年の「Windows 95」の登場により解像度と発色数が増加、技術進歩により、初め絵で描かれた作品の実写版もいくつか発売されました。
しかし、現在のアダルトゲームのグラフィックデザインの中核をなしているのは前掲の人物たちの絵を模倣しつつ成長した漫画・イラスト系同人作家による絵だといわれています。

萌え絵がアダルトゲームにおいて多い実利的な理由としては、第一に静止した立ち絵の構図が同じであるため、リアルな絵や全身図であるとそれが違和感を与えて無機質な印象を与えること(立ち絵を多くすれば解決できるが、管理が難しくユーザーも目が疲れる)があり、ディフォルメを強めることで、擬似的に与える印象を増やしていることが挙げられます。
もう一つは、立ち絵の多くは目と口元を変えることで表情差分を作るのですが、切り替えを十分に表現するには目にユーザーの焦点が当たる方が都合がよい。塗る時も素早く範囲を指定できます。
こうしたシンプルな形を採用し、「表現の多彩さ」と「改変のしやすさ」を兼ねることは、資源に限りがあるメーカー・制作に追われるスタッフにとっては重要なことであり、かつてのカセットテープやフロッピーディスク(FDD)など販売用記録媒体の容量の上限やコストが厳しかった時代にはなおさらのことだったのです。

 

 

ですが、その一方でハードウェア技術が発展しカセットテープ・フロッピーディスクからCD-ROM、DVD-ROMと記録メディアの大容量化が進み普及するに連れて、業界の全体の流れとしてデータ量・情報量は増大化傾向の一途を辿っています。
コンシューマ機向けのゲームソフトと同様に、

  • 声優によるセリフの同期
  • 動画(宣伝用デモムービー、オープニングアニメ、エンディングアニメ、作中の動画パートなど)
  • 主題歌・イメージソング
  • 体験版バージョンの制作・配布
  • 特典グッズが付属した限定パッケージによる販売促進
  • サブカルチャー関係のイベント に参加しての広報・宣伝

などといった要素が一般的になり、これらは複合的に重なってパッケージ規模の増大やトータルコストの上昇を引き起こしました。

 

移植と逆移植

ギャルゲー化という手法を確立したことでアダルトゲームのコンシューマゲーム機への移植のハードルが下がると、今度は逆にコンシューマゲーム機で発売されたギャルゲーがWindows版に移植されるようにもなりました。

その中には単純にWindowsにエミュレートしただけの作品もあるが、中にはギャルゲーに性的描写を追加し、アダルトゲームとして発売した作品も存在します。このようなWindows版移植作品を指して、コンシューマゲーム機からアーケードゲームへの移植と同様に「逆移植」と呼ぶこともあります。